アドバンテストの2026年4–6月期は、売上高が前年同期比39.3%増、営業利益が53.3%増でした。AI向け半導体を多く作るほど、動作や性能を確かめるテストも増える。会社が説明する需要の入口はそこにあります。ただし、必要な装置の量を決めるのは半導体の個数だけではありません。一つの半導体に、どれだけの時間と工程をかけるかも効いてきます。[1:4ページ、4:1ページ]

今回の決算には、その需要を取り込んだ増収増益と、投資評価益による利益の上積みが同居しています。まず装置の販売に近い数字を追い、その先で利益の性質と供給能力を確かめます。

数量に加え、一つの半導体を測る負荷が増える

会社は、AI関連の先端半導体の生産拡大と複雑化を、テスタ需要の増加要因に挙げています。質疑では、アクセラレータの3Dパッケージ化に伴い、テスト時間が長くなり、テストを行う工程も増えていると説明しました。推論AIの普及は、CPUやカスタムASICなどにも需要を広げています。[1:4ページ、4:1ページ]

検査する半導体が増え、さらに一個あたりの検査量も増すなら、既存設備で処理できる範囲に収まるかが課題になります。AIデータセンターの投資は、こうした半導体の製造・検査能力の増強を通じて、テスタの販売へつながります。クラウド企業の設備投資額をそのままテスタ売上に換算できる関係ではなく、途中の工程を追う必要があります。

4–6月期のSoCテストシステム売上高は2,596億円。前四半期の2,372億円から増えました。会社はGPU向けの堅調な販売に加え、ASIC向けも伸びたと説明しています。ただし、自動車・産業・通信向けも含むため、この2,596億円を「AI売上」と呼ぶことはできません。[2:6ページ、3:4ページ]

売上と営業利益の伸びを、四半期ごとに見る。値は直後の表でも確認できます。

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売上と営業利益の伸びを、四半期ごとに見る · 単位:十億円
期間売上高営業利益営業利益率区分
2025年4–6月263.8124.047.0%実績
2025年7–9月262.9108.441.3%実績
2025年10–12月273.8113.641.5%実績
2026年1–3月328.1153.146.7%実績
2026年4–6月367.5190.051.7%実績

図1|全て実績。単位は十億円。説明会資料の表示精度で作成。2025年4–6月期の営業利益には事業の一部譲渡益約25億円を含みます。[2:5・8ページ]

最高益の中で、何が増えたのか

全社売上高は3,674.73億円、営業利益は1,899.90億円でした。営業利益率は51.7%となり、前年同期の47.0%、前四半期の46.7%を上回っています。会社は増収と売上構成の改善を挙げ、円安も業績に寄与したと説明しています。[1:4・7ページ、2:5ページ]

一方、税引前利益は2,340.82億円で、前年同期比92.9%増。この増加をそのままテスタ需要の強さと読むと、評価益まで装置の稼ぎに混ぜてしまいます。営業利益に金融収益446.80億円を加え、金融費用5.88億円を差し引くと、税引前利益になります。[1:7ページ]

営業利益から税引前利益へ:金融収益を分ける。値は直後の表でも確認できます。

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営業利益から税引前利益へ:金融収益を分ける · 単位:十億円
項目金額
営業利益189.990
金融収益44.680
金融費用-0.588
税引前利益234.082

図2|2026年4–6月期実績。単位は十億円。金融収益の主因は戦略投資に関連する評価益です。損益計算書の数値から独自作成。[1:4・7ページ]

金融収益の主因は、投資ファンド持分の期末評価益です。この評価益はテスタの販売による利益ではなく、代金の回収による現金収入を示すものでもありません。事業の拡大を判断する際は、売上と営業利益を先に確認し、投資による損益を分けたほうが変化を追いやすくなります。[3:3ページ]

さらに、営業利益率にも一時的な押し上げが含まれます。会社は棚卸資産評価損の戻入れを挙げ、継続して発生する効果ではないと説明しました。高い利益率を、すべて持続的な販売力の改善として扱うことにも注意が必要です。[4:4ページ]

需要の先に、納入能力と部材コストがある

7月に会社は通期売上予想を1兆4,200億円から1兆7,140億円へ上方修正しました。ただし、売上の拡大と同じ勢いで利益率も上がり続ける計画ではありません。会社予想では、下期売上は上期より大きい一方、営業利益率は上期の51.7%に対して下期47.3%です。上期予想には今回の第1四半期実績を含みます。[1:5ページ、2:13ページ]

増収計画でも、下期の利益率は低めに置かれている。値は直後の表でも確認できます。

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増収計画でも、下期の利益率は低めに置かれている · 単位:十億円
期間売上高営業利益営業利益率区分
2026年4–9月802.0414.551.7%Q1実績を含む会社予想
2026年10月–2027年3月912.0431.547.3%会社予想

図3|2026年7月29日時点の会社予想。上下期は各6か月。単位は十億円。上期には第1四半期実績を含みます。[2:13ページ]

質疑で会社が挙げた逆風は、特にメモリ価格の上昇です。テスタ自体もDRAMを多く使うため、半導体需要の拡大は販売機会になると同時に、調達コストへ跳ね返ります。増産が進んでも、売上構成、為替、部材費によって利益の残り方は変わります。[4:4ページ]

供給面では、主要顧客や取引先と18か月先を見据えた需要見通しを協議し、生産能力計画に活用していると説明しています。これは18か月分の確定受注を意味しません。会社自身、設計完了後の特性評価までテスト時間や工程数を見通しにくい場合があると述べています。[4:3–4ページ]

次の決算で確認したいのは、予想した需要が実際の出荷へ進んだか、そして部材費が上がる中でどれだけ利益を残せたかです。SoCとメモリの売上を別々に追い、全社利益率の変化には製品構成や一時要因の説明を重ねる。投資評価益が増減しても、検査能力を供給する事業の進み方を見失わないためです。


資料と計算について

本文は億円、図は十億円で表示しています(1十億円=10億円)。FY2026は2026年4月から2027年3月。四半期短信はIFRS連結で、公認会計士・監査法人によるレビューはありません。会社の需要説明と予想は実績と区別しています。本稿は7月29日の決算を読み直した研究で、株価目標や売買推奨は扱いません。

  1. 2027年3月期 第1四半期決算短信:PDF4ページ=業績・会社説明、5ページ=通期予想、7ページ=損益計算書。
  2. FY2026 Q1 決算説明会資料:PDF5・8ページ=四半期推移、6ページ=製品別売上、13ページ=通期・半期予想。
  3. 説明会ノート:PDF3ページ=金融収益の説明、4ページ=製品別売上の説明。
  4. 質疑応答要旨:PDF1ページ=需要の要因、3ページ=供給能力・テスト要件の不確実性、4ページ=需要見通し・利益率。

ページ番号はPDFの先頭から数えたものです。図は以上の公開数値から独自に作成しました。

図表は公開資料の数値から作成しています。各図の数値は、直後にある表でも確認できます。

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